hid_blaster

2010-10 pic18blaster arm_blaster STM8S(改)OpenOCDライター


ATtiny2313(HIDaspxハードウェア)を使ってARM用JTAGアダプター(FlashROMへの書き込み、OpenOCD用デバッガ)を製作する。

/ATMEL_AVR/jpg/wsn216.jpg *1 ===JTAG CABLE===> /ATMEL_AVR/jpg/ARM/STM32.jpg

■ 概要

  これは、OpenOCD の DLL ハック(実験)です。
  即ち、外部に DLL を置いて、JTAGアダプターのドライバーの分離実装を試みています。

■ 現在のステータス

  低速ですが、とりあえず、ATtiny2313を使用したJTAGアダプターが動いています。
  現在、8kBファームの書き込み時間は3.4秒程度にまで高速化しています。
  (USB2.0HUBを通した状態での計測です)

■ 特筆すべき点

  • HIDaspxのファーム差し替えのみで実現しています。*2
  • HIDaspx AVRライターとしては、今までどおりに使えます。*3
  • PICライターとして、PIC18Fへブートローダーを書き込む用途に対しても今までどおりに使えます。

■ 試し方

  試行にはWindowsXPを用います。
  HIDaspx ハードウェアを用意して、ファームウェアのみ、下記のものに差し替えておきます。
    hid_blaster/firmware/main-12.hex

/ATMEL_AVR/jpg/AVR/sch-2313.png

註:上記回路図は5V駆動になっていますが、実際は3.3Vレギュレータを入れて3.3V駆動する必要があります。
  • ATtiny2313を5V駆動にする場合は、sa89a.net様のUSBブラスターもどきのように抵抗分圧する手法もあります。
結線は、
  ATtiny2313        ARM基板 JTAG端子
         PB7  ------------- TCK
         PB6  ------------- TDI
         PB5  ------------- TDO
         PB4  ------------- TMS
 となります。これ以外のnTRSTピンなどはまだサポートしていません。(USB-Blasterと同様)
  (上記4本の線は直結でも動作しましたが、100Ω程度の直列抵抗を入れてショート事故を防ぐようにする
  ほうが安全です)
  ARM側は3.3Vなので、AVR側の電圧に注意してください。(ATtiny2313側も3.3Vにする必要があります)
  hid_blaster/ ディレクトリの ocd.bat あるいは、 ocd2.bat を起動して、openocd.exeの吐き出すメッセージ
  を確認することが出来ます。
  • ocd.batは書き込みターゲットSTM32マイコン用、ocd2.batは書き込みターゲットLPC2388マイコン用の起動ファイルです。
  正常に接続出来ているようでしたら、telnetで localhost:4444 番に接続して、OpenOCDコマンドを実行して
  みてください。

■ ディレクトリ構成

hid_blaster-+- ソース.
            |
            +--helper\   ヘッダーファイル.
            +--jtag\     ヘッダーファイル.
            |
            +--firmware\ ATtiny2313側のファームウェア (main-12.hexを焼きます)
            |
            +--openocd_patch\  openocd本体側作成用の改造点

■ プログラムの再ビルド方法

  WindowsXP上のMinGW-gccコンパイラを用いてmakeしてください。
  makeすると、hidblast.dll が作成されます。
  • openocd.exe本体を再ビルドする方法は、ここを参照してください。
  今回の改造部分ソースはopenocd_patch/ ディレクトリに置いています。
  Linux上でのビルドオプションは、こんな感じです。
  $ ./configure \
      --build=i686-pc-linux-gnu \
      --host=i586-mingw32msvc \
      --enable-maintainer-mode \
      --enable-dummy
  出来上がった openocd.exe 本体は、ドライバーとして、同一ディレクトリに存在する hidblast.dll を
  起動時に呼び出します。(存在しなければ、dummyドライバーのみが組み込まれます)

■ 現状の問題点

  まだ遅いです。
  HIDmon / HIDaspx の機能を残してはいますが、コードサイズ節約による速度低下があります。

■ ライセンス

  OpenOCDの配布ライセンスに準じます。

■ 展望

  • hidblast.dll ファイルを(自力で)差し替えるだけで、これ以外のJTAG自作書き込み器をサポートすることが可能になります。
    • OpenOCD本体ソースに変更を加えることなく、自由にドライバー作成できるようになります。
    • OpenOCD本体ソースには殆ど手をつけていませんので、今後のOpenOCDの変更点に追従する手間はほとんど要りません。
    • (ただしjtag_command_queueの構造が変わった場合はもろに影響を受けますが・・・)
  • hidblast.dll のエントリーポイントは、
         DLL_int get_if_spec(struct jtag_command **q);
  • だけです。
  • 引数のstruct jtag_command **qのqには、openocd本体のjtag_command_queueというグローバル変数のアドレスを渡します。
  • 戻り値は、(intになっていますが) ドライバー記述構造体のアドレスになります。

ダウンロード(仮)

hid_blaster.zipWindowsXP,MinGW用ソース、実行ファイル、AVR側ファームウェア、openocd本体改造パッチ
  • 数日おきに更新していますので、古いと思ったら最新を取得してみてください。




バッチ実行によるFLASH書き込みログ

C:\hid_blaster>openocd.exe -f blaster.cfg -f stm32.cfg -f batch.cfg
Open On-Chip Debugger 0.5.0-dev (2010-10-10-20:52)
Licensed under GNU GPL v2
For bug reports, read
        http://openocd.berlios.de/doc/doxygen/bugs.html
if load
Info : only one transport option; autoselect 'jtag'
10 kHz
1000 kHz
adapter_nsrst_delay: 100
jtag_ntrst_delay: 100
=*= dummy_init(void)
TARGET DEV_ID=5a
Info : clock speed 1000 kHz
Debug: 1 0 bitbang.c:439 bang_reset(): reset to: RESET
Info : JTAG tap: stm32.cpu tap/device found: 0x3ba00477 (mfg: 0x23b, part: 0xba00, ver: 0x3)
Info : JTAG tap: stm32.bs tap/device found: 0x16410041 (mfg: 0x020, part: 0x6410, ver: 0x1)
Info : stm32.cpu: hardware has 6 breakpoints, 4 watchpoints
   TapName             Enabled  IdCode     Expected   IrLen IrCap IrMask
-- ------------------- -------- ---------- ---------- ----- ----- ------
 0 stm32.cpu              Y     0x3ba00477 0x3ba00477     4 0x01  0x0f
 1 stm32.bs               Y     0x16410041 0x06412041     5 0x01  0x03
                                           0x06410041
                                           0x06410041
                                           0x06410041
                                           0x06410041
Info : JTAG tap: stm32.cpu tap/device found: 0x3ba00477 (mfg: 0x23b, part: 0xba00, ver: 0x3)
Info : JTAG tap: stm32.bs tap/device found: 0x16410041 (mfg: 0x020, part: 0x6410, ver: 0x1)
Warn : Only resetting the Cortex-M3 core, use a reset-init event handler to reset any peripherals
target state: halted
target halted due to debug-request, current mode: Thread
xPSR: 0x01000000 pc: 0x08000120 msp: 0x20005000
auto erase enabled
Info : device id = 0x20016410
Info : flash size = 128kbytes
wrote 8192 bytes from file main-0000.hex in 3.421875s (2.338 KiB/s)
verified 8016 bytes in 1.140625s (6.863 KiB/s)
shutdown command invoked
=*= dummy_quit(void)



JTAGコマンドの追加とプロトコルについて

  • hidcmd.h
    #define HIDASP_JTAG_WRITE	  0x34	//JTAG 書き込み.
    #define HIDASP_JTAG_READ	  0x35	//JTAG 読み書き.
  • が追加されてます。
  • HidReportの下りストリーム(PC->AVR) サイズは最大38バイトまでです.
    +------+------+-------------------+------+-------------------+------+-------------+-----+
    | 0x34 | jcmd |  data列           | jcmd |  data列           | jcmd |  data列     | 0x00|
    +------+------+-------------------+------+-------------------+------+-------------+-----+
  • jcmdの1バイトは以下のように定義(その1)
    bit 7   6   5   4   3   2   1   0  
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
      | 0 | b6| JTAG転送bit数(TDIの数)|   + JTAG転送bit数分の TDIビット(LSBファースト)  
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
    • b6はTDI送出の最終bitでTMSを1にするなら1 しないなら 0 : TMSは最終bit以外は常時0


  • jcmdの1バイトは以下のように定義(その2)
    bit 7   6   5   4   3   2   1   0  
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
      | 1 |BITBANG転送回数(後続byte数)|   + BITBANG転送回数分(byte数)のデータ
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
  • BITBANGデータの1回分は、TCK=LOWのサンプルとTCK=HIGHのサンプルをパックしたデータ。
    bit 7   6   5   4   3   2   1   0  
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
      |TCK|TDI|TDO|TMS|TCK|TDI|TDO|TMS|  (上位4ビットが最初にセットされ、次に下位4ビットがセットされます)
      +---+---+---+---+---+---+---+---+
  • TCKを変化させたくないときは、両方のTCKビットを同じ値にします。
  • TDOは入力PINなので出力されるわけではないけれど、ATtiny2313の場合はTDOプルアップ指定(1)になります。



  • HidReportの登りストリーム(AVR->PC) サイズは最大38バイトまで. HIDASP_JTAG_READ発行時のみ折り返し返送されます.
    +----------------------------------------+
    | JTAG受信データ(TDOの読み取りビット列)  |  (最大38バイトまで)
    +----------------------------------------+
    • ビット列はLSBファースト. 送信されたTDIビット列とそのまま対応しています.

その他補足

#define HIDASP_JTAG_READ	  0x35	//JTAG 読み書き.
  • を実行するときは、HidReportの下りストリーム(PC->AVR)を単純な形式(1コマンドのみ)にします。
    +------+------+-------------------+------+
    | 0x35 | jcmd |  data列           | 0x00 |
    +------+------+-------------------+------+
  • jcmdがBitBangモードのときは、返答データはありません。JTAG(TDI列)のときのみ(TDO列)を返します。
  • JTAGストリームが長い場合(56bit以上のTDIを送ってTDOを受け取る)は、56bit単位に分割転送します。
  • その場合、最後のストリームの最終bitのみ、TMSを1にする処理が入ります。(b6=1のパケットを用意します)


  • ATtiny2313はファームウェアサイズが極端に少なく(2048byte)複雑な処理を入れられないので、TDOの読み取り動作 は常に実行されます。(返答不要な場合も)
  • また、TDI送出->TDO読み取りの処理も、8bitループと8bit未満端数ループに分離すれば高速化出来ますが、ファームウェアサイズの制限のためそれを行っていません。


  • ATtiny2313のファームを再ビルドするときは、gcc3.4ベースのavr-gccを使用してください。
  • gcc-4.xベースのavr-gccだとサイズオーバーします。

WinAVR-20060421の入手先は以下を参照してください。





OpenOCDの簡単な使い方

  • 起動したらまず、localhost:4444番ポートにtelnetで(TeraTermなどを使って)繋いでください。
  • TeraTermから、以下のようなコマンドをタイプすると、結果が表示されます。
    OpenOCDコマンド意味
    scan_chain接続されているTAPのリストを見る。
    reset haltターゲットCPUをHALTさせる
    regターゲットCPUのレジスタを見る
    mdw アドレス カウントdisplay memory words <addr> [count]メモリーダンプ
    stepCPUをステップ実行させる
    flash write_image erase main.hexmain.hexをFLASH ROMに書き込む(そのまえにCPUをHALTにしておきます)





参考文献(LINK)

OpenOCDが動くまで (kimura Lab)

OpenOCD (ベストテクノロジーさん)

OpenOCD本家





リンク

千秋ゼミ:arm_blaster AVR/news58








*1 画像は wsnak 様が販売している WSN216基板  
*2 但しAVRチップには3.3Vを供給する必要があります
*3 ファームウェア容量節約のため、若干の速度低下があります。