stm8s_blaster
2010-10 PIC18Fの実装:pic18blaster ATtiny2313の実装:hid_blaster STBEE MINIの実装:arm_blaster
STM8S-Discovery(のST-Link側だけ)を使ってARM用JTAGアダプター(FlashROMへの書き込み、OpenOCD用デバッガ)を製作する。†
■ 概要
これは、OpenOCD の DLL ハック(実験)です。 即ち、外部に DLL を置いて、JTAGアダプターのドライバーの分離実装を試みています。
■ 現在のステータス
STM8S-Discovery のST-Link側だけを利用してJTAGアダプターを実現しています。
同一ファームウェアのままで、JTAGアダプターのほかに、AVRライター(HIDaspx相当の機能) とPIC18Fライターとしても使用可能です。
■ 免責
- ST-Link側のファームウェアを書き換えると、オリジナルのファームウェアに戻すことは出来ません。
- つまり、STM8S(8bit CPU)の開発ツールとしては使用できなくなります。*1
- ファーム書き換えは自己責任で行ってください。
■ 試し方
- 試行にはWindowsXPを用います。
- STM8S-Discovery(STM32)にはあらかじめブートローダーがインストールされているものとします。
- ブートローダーの導入が一番難しい問題です。STM32側のファームウェアを差し替えるためには別のJTAGアダプターが必要になります。鶏と卵問題が発生するわけです。
- 選択肢としては、以下の4択(あるいは6択?)となります。
- (1)PIC18FのJTAGアダプター実装:pic18blaster を使う。
- (2)ATtiny2313のJTAGアダプター実装:hid_blaster を使う。
- (3)STBEE MINIのJTAGアダプター実装:arm_blaster を使う。
- (4)FTDI社のFT2232Dを使用したJTAGアダプターを用意する。
- (5)これ以外の何らかのJTAGアダプターを用意する。
- 一応PCのパラレルポートで簡単に自作出来ます。*2
- (6)STM32のシリアルブートモードを利用してRS232C回線からブートローダーを書き込む(参考:ねむいさんのBlog)
QFP CPUの足上げが必要になります。- シリアルブートモードにするためには、R15(100kΩ)にてプルダウンされているBOOT0端子を10kΩ程度でプルアップすれば可能かもしれません。(未確認)
- 下記のファームウェアを書き込みます。
stm8s_blaster/firmware/main-2000.hex
- 書き込みツールには、armon/armbootに含まれているarmbootを使用します。
C:> armboot stm8s_blaster/firmware/main-2000.hex
- そのまえに、armon/armbootのファームウェアを書き込んでおいてください。
- 次に、 JTAGが使用できる適当なARM基板を以下のような対応でJTAG接続しておきます。
- 結線は、STM8S-DiscoveryのJTAG書き込み端子をそのまま流用します。
- ただし、nTRSTは未接続にしてください。
STM8S-Discovery側 ターゲットARM基板 JTAG端子 PA14 ------------- TCK PA15 ------------- TDI PB3 ------------- TDO PA13 ------------- TMS
- となります。これ以外のnTRSTピンなどはまだサポートしていません。(USB-Blasterと同様)
- また、上記結線は直結ではなく100Ω程度の抵抗を介して接続するようにしてください。
- stm8s_blaster/openocd/ ディレクトリの ocd.bat あるいは、 ocd2.bat を起動して、openocd.exeの吐き出すメッセージを確認することが出来ます。
- 正常に接続出来ているようでしたら、telnetで localhost:4444 番に接続して、OpenOCDコマンドを実行してみてください。
■ ディレクトリ構成
armblaster-+ | +- firmware\ STM32側ファームウェア. +- HW\ STM32側ファームウェアのビルドに必要なライブラリ +- inc\ STM32側ファームウェアのビルドに必要なヘッダー | +- openocd -+ openocd.exe と hidblast.dllソース. | | | +--helper\ ヘッダーファイル. | +--jtag\ ヘッダーファイル. | | | +--openocd_patch\ openocd本体側作成用の改造点 | | | +- tools ---+--armon\ armon (動作確認用モニタ) | +--avrwriter\ AVRライター (HIDaspx互換) | +--picwriter\ PICライター (pic18spx互換) | +--picwriter24\ PIC24Fライター
ご注意:tools/armon/armon.exeはこのファームの接続確認専用です。通常はarmon/armbootの配布ファイルに含まれているほうのarmon.exeを使用してください。
■ プログラムの再ビルド方法
WindowsXP上のMinGW-gccコンパイラを用いて openocd/ ディレクトリにて makeしてください。 makeすると、hidblast.dll が作成されます。
- openocd.exe本体を再ビルドする方法は、ここを参照してください。
今回の改造部分ソースはopenocd_patch/ ディレクトリに置いています。
Linux上でのビルドオプションは、こんな感じです。 $ ./configure \ --build=i686-pc-linux-gnu \ --host=i586-mingw32msvc \ --enable-maintainer-mode \ --enable-dummy
出来上がった openocd.exe 本体は、ドライバーとして、同一ディレクトリに存在する hidblast.dll を 起動時に呼び出します。(存在しなければ、dummyドライバーのみが組み込まれます)
■ 現状の問題点
- HIDデバイスなので遅いです。
- Flashの書き込みがやや遅いです。
- USBデバイスの文字列名称が "ARM32spx" --> "ARMblast" に変更になっていますので、armonを使用する場合は、この配布ファイル内のarmon.exe を使用してください。
- (名称変更の理由は、書き込みターゲットのファームウェアがarmon/armbootの場合に そちらに接続されてしまい誤動作するので変更しました。)
■ ライセンス
OpenOCDの配布ライセンスに準じます。
■ 展望
- hidblast.dll ファイルを(自力で)差し替えるだけで、これ以外のJTAG自作書き込み器をサポートすることが可能になります。
- OpenOCD本体ソースに変更を加えることなく、自由にドライバー作成できるようになります。
- OpenOCD本体ソースには殆ど手をつけていませんので、今後のOpenOCDの変更点に追従する手間はほとんど要りません。
- (ただしjtag_command_queueの構造が変わった場合はもろに影響を受けますが・・・)
- hidblast.dll のエントリーポイントは、
DLL_int get_if_spec(struct jtag_command **q);
- だけです。
- 引数のstruct jtag_command **qのqには、openocd本体のjtag_command_queueというグローバル変数のアドレスを渡します。
- 戻り値は、(intになっていますが) ドライバー記述構造体のアドレスになります。
ダウンロード(仮)†
stm8s_blaster.zip | WindowsXP,MinGW用ソース、実行ファイル、AVR側ファームウェア、openocd本体改造パッチ |
- 数日おきに更新していますので、古いと思ったら最新を取得してみてください。
ARM以外の書き込みターゲットについて†
- 現状のarmblasterは、pic18spxベースの汎用ライターにJTAGコマンドを付け足しただけのものですので、
- 多くのATMEL製AVRチップとMicrochip製PIC18Fシリーズ、そして一部のPIC24Fシリーズへの書き込み機能を備えています。
- コマンドライン版書き込みツールはpic18spxのものを簡単に移植することが出来ます
が、今のところまだ用意できていません。- 用意しました。
armblaster/tools/avrwriter/ | /picwriter/ | /picwriter24/
- 用意しました。
- AVR,PIC18Fを焼く場合の結線図
STM8S-Discovery側 ARMターゲットのJTAG端子 PIC18F AVR PA14 ------------- TCK ---------- PGC --- SCK PA15 ------------- TDI ---------- PGM --- MOSI PB3 ------------- TDO ---------- PGD --- MISO PA13 ------------- TMS ---------- MCLR --- RESET
- 上記結線は直結ではなくSTBEE MINIからは100Ω程度の抵抗を介して接続するようにしてください。
- PIC18Fは低電圧書き込みのみをサポートします。高電圧(9V〜12V デバイスによって異なります)書き込みは出来ません。
参考
- AVR-ISP用:ピンヘッダーを基板上から見た配置
5 3 1 +----+----+----+ |Rset|SCK |MISO| +----+----+----+ |GND |MOSI|Vcc | +----+----+----+ 6 4 2
- PIC18FのISPにもそのまま使いまわし
5 3 1 +----+----+----+ |MCLR|PGC |PGD | +----+----+----+ |GND |PGM |Vcc | +----+----+----+ 6 4 2
- それをまたARM(JTAG)にも使いまわし
5 3 1 +----+----+----+ |TMS |TCK |TDO | +----+----+----+ |GND |TDI |Vcc | +----+----+----+ 6 4 2
STM8S-Discovery以外の基板への移植について。†
- STM8S-D,CQ-STARM,STBEE,STBEE MINIの4機種の基板については全てarmon/armbootを移植済みです。
- なので、armblasterの移植も簡単に出来ると思います。
- JTAG,AVR-ISP,PIC18書き込み用の端子(STBEE MINIではPB8〜PB11)をそれぞれの基板の都合の良い位置に割り付ける作業は、おそらく定義ファイルを書き換えるだけで済みます。(ポートの制御はArduino風にdigitalRead(pin)とdigitalWrite(pin,level)で行なっていますので、pinの定義が変わるだけで対応可能です)
- Makefileにはすでに基板の種別定義が含まれていますので基板名のdefineを書き換えるだけですみます。
JTAGコマンドの追加とプロトコルについて†
- hidcmd.h
#define HIDASP_JTAG_WRITE 0x18 //JTAG 書き込み. #define HIDASP_JTAG_READ 0x19 //JTAG 読み書き.
- が追加されてます。
- HidReportの下りストリーム(PC->AVR) サイズは最大64バイトまでです.
+------+------+-------------------+------+-------------------+------+-------------+-----+ | 0x18 | jcmd | data列 | jcmd | data列 | jcmd | data列 | 0x00| +------+------+-------------------+------+-------------------+------+-------------+-----+
- jcmdの1バイトは以下のように定義(その1)
bit 7 6 5 4 3 2 1 0 +---+---+---+---+---+---+---+---+ | 0 | b6| JTAG転送bit数(TDIの数)| + JTAG転送bit数分の TDIビット(LSBファースト) +---+---+---+---+---+---+---+---+
- b6はTDI送出の最終bitでTMSを1にするなら1 しないなら 0 : TMSは最終bit以外は常時0
- jcmdの1バイトは以下のように定義(その2)
bit 7 6 5 4 3 2 1 0 +---+---+---+---+---+---+---+---+ | 1 |BITBANG転送回数(後続byte数)| + BITBANG転送回数分(byte数)のデータ +---+---+---+---+---+---+---+---+
- BITBANGデータの1回分は、TCK=LOWのサンプルとTCK=HIGHのサンプルをパックしたデータ。
bit 7 6 5 4 3 2 1 0 +---+---+---+---+---+---+---+---+ |TCK|TDI| - |TMS|TCK|TDI| - |TMS| (上位4ビットが最初にセットされ、次に下位4ビットがセットされます) +---+---+---+---+---+---+---+---+
- TCKを変化させたくないときは、両方のTCKビットを同じ値にします。
- HidReportの登りストリーム(AVR->PC) サイズは最大64バイトまで. HIDASP_JTAG_READ発行時のみ折り返し返送されます.
+----------------------------------------+ | JTAG受信データ(TDOの読み取りビット列) | (最大64バイトまで) +----------------------------------------+
- ビット列はLSBファースト. 送信されたTDIビット列とそのまま対応しています.
その他補足
#define HIDASP_JTAG_READ 0x19 //JTAG 読み書き.
- を実行するときは、HidReportの下りストリーム(PC->AVR)を単純な形式(1コマンドのみ)にします。
+------+------+-------------------+------+ | 0x19 | jcmd | data列 | 0x00 | +------+------+-------------------+------+
- jcmdがBitBangモードのときは、返答データはありません。JTAG(TDI列)のときのみ(TDO列)を返します。
- JTAGストリームが長い場合(56bit以上のTDIを送ってTDOを受け取る)は、56bit単位に分割転送します。
- その場合、最後のストリームの最終bitのみ、TMSを1にする処理が入ります。(b6=1のパケットを用意します)
- armblasterのファームを再ビルドするときは、CodeSourcery G++ Lite を使用してください。
OpenOCDの簡単な使い方†
- 起動したらまず、localhost:4444番ポートにtelnetで(TeraTermなどを使って)繋いでください。
- TeraTermから、以下のようなコマンドをタイプすると、結果が表示されます。
OpenOCDコマンド 意味 scan_chain 接続されているTAPのリストを見る。 reset halt ターゲットCPUをHALTさせる reg ターゲットCPUのレジスタを見る mdw アドレス カウント display memory words <addr> [count]メモリーダンプ step CPUをステップ実行させる flash write_image erase main.hex main.hexをFLASH ROMに書き込む(そのまえにCPUをHALTにしておきます)
参考文献(LINK)†
OpenOCDが動くまで (kimura Lab)
OpenOCD (ベストテクノロジーさん)
OpenOCD本家
千秋ゼミ HIDaspxでOpenOCD(動作確認までの経過報告)
千秋ゼミ stm8s改造のARM_blasterの紹介
回路図はマニュアルに記載されていました。
*1 奥の手として、versaloonのファームウェアを載せることによりSTM8Sへの書き込みだけは出来るようにすることが出来るかもしれません。参考:ねむいさんのBlog
*2 byte blasterで検索。続きはWebで!?書き込みソフトはOpenOCDがあればOKです。